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Tome Museum

STORY

ピアノがピアニストに恋をした。

 

 

ピアニストの指先が 

ピアノのキーに触れると 

 

ほんの少し高めの音が出てしまう。

 

 

調律師を呼んでみたが 

 

調律師に恋していないピアノは 

美しく正確な音を出すばかり。

 

「完璧ですね」

 

なぜか涙目の調律師。

 

 

ピアニストには

愛するフィアンセがいた。

 

ふたりがピアノの前に並んで

仲良く連弾とかしようものなら

 

ピアノは嫉妬に狂って

とんでもない不協和音を響かせる。

 

 

とうとう恋するピアノは 

ピアニストにきらわれてしまい 

 

隣町の楽器屋に売られてしまった。

 

 

さて、それから

この失恋したピアノがどうなったのか

 

と言うと・・・・

 

 

音楽家たちの噂によれば 

 

さる異国のピアノ愛好家に 

大層高く買われたそうである。

ピアノの失恋

ピアノの失恋
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